続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「鉄くず拾いの物語」

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2013ボスニア・ヘルツェゴビナ・フランス・スロベニア合作/原題Epizoda u zivotu beraca zeljeza/ダニス・タノヴィッチ監督/74分

 

またもダニス・タノヴィッチの映画。

いやあ、重い、重たかったなあ。仕事でなければ避けて通ってしまいそう。このところ重たい映画続きで、精神にひびいてます。能天気な映画も見なくっちゃ、とまじで思う。

 

舞台はボスニア・ヘルツェゴビナの貧しい村。極貧のロマ族(ジプシー)の家族に実際に起こった出来事を、新聞を通じて知ったタノヴィッチが静かな怒りを持って映画化した。

 

普通に劇映画化することがスケジュール的にかなわなかったため、なんとこの作品に出演している人はみな実際の当事者。ロケ地も実際の場所。役者は医者を演じた2人だけという。(金がないから死にそうでも手術をしないと言った本人は、そりゃあとても出演できないだろう)

たった9日間の撮影で、ぶれぶれの手持ちカメラで脚本もなく、ナジフへの聞き取りを中心として編まれた作品。

そして主演で夫役のナジフ・ムジチは、ベルリンで主演男優賞を穫っている。

 

ひたすらにどんずまりのような貧困の姿を描く。彼らがどのように日々時間を過ごしているのか、何をどのように食べ、どれくらいのスピードで歩き、働いているのか。身につけた衣服、ひどい映りのテレビ、沁み込むような寒さと雪。

大人は一様に表情をなくしたような疲れたたたずまいをしていて、怒るような気力もない。差別されている民族に生まれた幼い子どもたちは、何も知らずにひたすらにはしゃいでいる。終始すごく物悲しい。

 

そのままのドキュメンタリーのように見せて、やはりタノヴィッチのまなざしがあるからこの作品は成立しているのだろうなと感じる。

すごくパーソナルなんだけれど、客観性と登場人物に対するリスペクトがある。疲れてぼろぼろで、日々をなんとか這うように生きているような家族なのだけど、ただ汚らしくてみじめではなく、独特の魅力をたたえている。

そしてベースに静かな、不屈の怒りが流れている。全てを小さな人間の力でやれることでまかないその日暮らしをするナジフの肩越しに、大工場が威勢良く吐き出す煙が空気を汚し続けている対比。

 

 

そして人生は続く。誰にも同じように日々は過ぎてゆく。とにかく目の前の、出来る限りの最善を尽くし続ける。明日のことはもう見ない。そういう暮らしを体感として理解させられる。 

世界にはこういうことがあるんだということを目を逸らさず見るということだ。

家族や近隣の人々の温かみだの、絆だのに無理に希望を見出してみるような見方はしゃらくさいばかりだ。そんなのは当事者にしたらひたすらくそくらえ、であろう。