続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」

最近、なんでなんだろう。平々凡々な日常は変わらないのに、いろいろなことをぐるぐると考えることが止まらず困っている。

 

一人の時間があればずっと何か書いていたいって思う反面、でも何から書けばいいのやら、途方に暮れる。

差し当たりなトピックをチョイス、さくっとご紹介。

 

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2017年アメリカ作品/マイケル・ショウォルター監督/120分

 

舞台はシカゴ。地元のコメディシアターでスタンダップコメディアンを目指して武者修行を続ける厳格な家庭に育ったパキスタン人青年と、白人アメリカ人女性の実話を基にした恋愛ドラマ。

主演を演じるのは、リアルにこの実話の主人公であるクメイル・ナンジアニ。今では人気アメドラのレギュラー俳優にもなり、キャリアを成功させている。

 

 

この作品、いろいろいいのだけど、構成、話運びの自由さに好感。

いわゆるハリウッド映画の型にはまった作りではなく、ハリウッド的文法から軽やかに逸脱していて、ちょっと不思議な感覚もある。でも、けして見にくいことはなく、逆に飽きずに楽しく見る事ができた。

 

そして会話の軽妙でチャーミングなこと!一生懸命だからこそのこっけいさに吹き出してしまうような、人間を可愛らしく思えるやりとりの数々に心が温かくなる。恋人の会話もとっても可愛らしく気が利いていて、絶妙な共感どころ、笑いどころを突いてくる。人種やルーツの異なるふたりだけれど、とってもぴったり、お似合いだなと感じられる。

ゾーイ・カザン、アングロサクソン系の女優に多い、パワフルで強い、怖い感じがなくて、素直でキュートな魅力。典型的美人じゃないかもしれないけど、すごく可愛かった。

 

この作品には嫌な奴がひとりも出て来ない。皆でこぼこしているのだけど、まっすぐで。その人なりに身近な人を愛し思っている愛すべき人たちばかり。

皆、自分に正直に善く生きようと思っていて、本当の意味で自分を大切にしていて、変な無理をしないことが一周回って一番ハッピーなんだ、と教えてくれる。

考え方が合わなくても、自分を犠牲にしたり、我慢をしたりしない。愛し合っているからこそ、相手を自分の思うようにねじ曲げてもハッピーエンドはないんだよな、と思う。

 

こういう後味の映画、久しぶりだった。大仰な感じがなくてさりげなく、くすっと笑えて心がぽかぽかする。人間て可愛いな、と思える映画っていいな。

80年代、90年代の映画には、こういう後味の作品て結構あったよね、と言い合う。

 

そして、久々のホリー・ハンター。ああやっぱり好き。嘘くさくなくって、我慢がきかなくって、でも芯に清潔なものがどーんとあるというキャラクター(エミリーのママ)にぴったりだった。皺があっても、こんなにきれいで自然な笑顔!胸がきゅんとするようなきれいなホリーの顔。リスペクト。

 

個人的に整形を悪いとは思わないけれど、ハリウッド女優が無理な若づくりのために手術するのはもったいないからやめたほうがいいよね、と思う。

生きてきた年輪が顔には表れる。

多くの女優が自らの生きざまを整形手術で簡単に消し去ってしまって、のっぺらぼうみたいになってしまう。しばらく経つと、そのかりそめの若さもどんどん崩れて来て、果てなき戦いに挑む事になるのだ。

誰もが平等に年を取るし、誰もが年老いて死ぬという当たり前のことに、全力で抗って生きるって、なんてしんどく報われない生き方なんだろう。

 

つるんとした表皮と引き換えに失われるのは、思慮深さや、威厳や、苦悩や、寛容さといった優れて値打ちのあるものが刻まれた、皺も含んだその人にとって唯一無二の人間らしい表情。

それは捨て去ってしまうにはあまりに惜しいものだ。