続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「エミアビのはじまりとはじまり」

今日は一日しとしとと雨のよう。雨音が心地良く、落ち着くなあ。今日も静かに過ごそう。

 

f:id:beautifulcrown7:20180914093013p:plain

2016年/渡辺謙作監督/87分

 

仕事きっかけでなければスルーしていただろうこの作品。

確かに小さな作品だし、気恥ずかしいようなぶきっちょさに度々つっかかり、なかなかスムースには見られなかったのだけど、見終わった後の気持ちは意外なほど爽やかだった。

作り手に打算的でずるいところがなく、誠実な作品だったからだと思う。

 

お笑い芸人の話を、お笑いでない人たちだけで作る。先日見た「火花」とは異なるスタンスであり、会話の掛け合いや漫才のシーンのクオリティーの差は残念なくらいに大きい。冒頭の漫才シーンでくじけそうになる人も一定数いそうだ。

お笑いって厳しいものなのだなあ。

 

ただ、ラストの実道と黒沢の新コンビによる漫才は、普段なかなか見ないタイプの漫才、映像ならではのアイデアもあって楽しめた。

新井浩文のちょっと人を食ったような動じなさが、見ている安定感に繋がっていたと思う。

 

主役二人がやけにふわふわしてあやういのだけど、新井浩文黒木華が余裕の達者なたたずまいででどっしりいることが、かなり作品の助けになっていたという印象。

でも主役ふたりと海野の恋人のひな子ちゃんは初々しくて良かったし、海野を演じた前野朋哉は彼だけの個性が好ましく、今後が楽しみ。

 

個人的に印象に残っているのは、暴力の描写。理不尽なくらいに痛い、怖い暴力で、軽いタッチの作品のはずなのに、シャレにならない顔をそむけたくなるようなリアルな描写に戸惑う。「人が死ぬ」ことは、比較的軽くあっさり描かれているのに。??

暴力や暴言のピークで「俺を笑わせてみろ」と加害側が言って、寒い雰囲気のなか、漫才師が滑稽なネタを披露するというモチーフがたびたび出てくる。

 

暴力の笑いの高低差、そんな中で人を笑わせるということのすごさ。それが監督の見せたいことなのだということはさすがに分かるが、この部分にはまれるかどうかで作品の好き嫌いが分かれるんだろう。私は、笑えない派だったな。