続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間」

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2018年/米林宏昌・百瀬義行・山下明彦 監督/54分

 

夏休み中に見られなかったけど、子供たちと見に行って来た。

3作品それぞれ表現の異なるクオリティーの高いアニメーションの表現を堪能して、短くも充実した時間だった。丁寧で誠実な仕事はさすが。

 

子供たちは「短くて物足りなかったー。ひとつひとつの作品をもっと長くしてほしかった!もっと見たかった!」と言っていた。

どういう事情でこういうスタイルになったかを知らないけれど、確かになあーと思う反面、この短尺でそれぞれが感動を生むことに成功していたということは、私はすごいことだなと思った。

 

カニーニカニーノ」米林監督、したたるような瑞々しい緑。いつもながら自然の表現が素晴らしい。CGを合成した水の描写、周囲のアニメーションと絶妙に溶け込みつつ美しさが際立っていた。

ちょっと「アリエッティ」を思い出すような、水の下に私達の知らない豊かでスペクタクルな世界が広がっているという舞台装置。

自然に翻弄されながらも、幸せに生き生きと生きる小人たちの世界。

絵本のようにシンプルなお話、普段見ているものごとのサイズ感をがらりと変える「小人になった」目線で物語が繰り広げられる。目新しい発想ではないかもしれないけれど、なにしろ丁寧でクオリティーが高いアニメーション表現ゆえ、わくわく楽しみながら見られた。

 

「サムライエッグ」百瀬監督、おっちんは一番これが好きだった!と。

アニメーションの表現はそれぞれ甲乙つけがたいけれど、タイトルの「ちいさな英雄」を一番感じられた、内容が心に残ったのはこの作品かもしれない。

重い卵アレルギーの少年。それを支えるお母さん、取り巻く学校や周囲の人々。ささやかな、ごく個人的なことなのだけど、どんなにそれが大変か外からは見えにくい奮闘がとてもよく伝わる。

林明子さんの絵のような、ふんわりとした優しいタッチのアニメーション。

関東住みで関西弁丸出しの母ちゃん、やや口悪しという設定が、「うちとおんなじ!」とおっちん、母ちゃんが何か言うたびに何度も吹き出しながら私をつっついていた。

 

「透明人間」山下監督、3作中、一番エッジの利いた作品。この作品の暗さは個人的に安らぐなあ。「おおかみこども〜」のように暗さに憩う感覚。

中田ヤスタカの音楽はやはり秀逸で、作品のレベルをぐっと引き上げている感じがあった。

いささかシュールな表現に、子供たちはややついていけてない感じだったけど、

ふわ〜っと浮いて、どこまでも飛んでいってしまうものすごい恐怖感などがひしひしと身に迫ってリアルで、意味が分からなくてもそれこそがアニメの値打ちだと思う。

 

 

アニメほど、「神は細部に宿る」映像表現はないなと改めて思う。

どうとでも作れるからこそ、本物を感じさせないといけない。

それは、宮崎さんや高畑さんが伝え、鍛えた哲学でもあると思う。ジブリを主戦場に、日本のアニメーションでトップの場所でやってきた監督たちゆえ。

 

3作品、目に見える表現はそれぞれ違っても、本当に全てのものをよく見ていて、何ひとつ適当に描いていないってすごいなあと途方もない気持ちになる。

そういうすさまじいまでの細やかさは、やっぱりジブリ・クオリティーだと思う。

 

長くやってきて、誰も育たなかった。

俺はみいんな食っちゃうんだよ。食っちゃう。

と、宮崎監督はドキュメンタリーの中で自虐的に言っていた。確かに死んでしまった人もいたけれど。でも彼らはやはり宮崎さんのすぐれた後継者たちなのだと思う。

西村プロデューサーも、良くも悪くも鈴木さんの後継的な存在であることは否めないと思う。

 

その上で、今後は若いもんだけでやっていく!という覚悟、当然そうあるべきで今後に期待。