続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

3歩進んで2.5歩下がる

日に日に秋らしい朝の空気。雲がもう夏の雲じゃなくなってきている。

 

実家の母から美味しい穴子が届いて、お礼の電話をかけると、関西は大雨警報中、今も土砂降りだと言う。

今回の大阪の豪雨ではあちこちに色々な影響があり、まだまだ冷めやらないという口ぶりの母。

 

でも、東京の近くにいて、全国ニュースだけを見ていると、どうもそんな緊迫した空気感は感じられない。

北海道の地震はさすがに報じられ続けているが、もし東京でこのことが起こったらと思うと、報じ方は随分違うと思う。

この夏の天災続きの日本の状況、明らかに総裁選やらオリンピックどころではないのに、どこかこともないような空気感にかえって狂気を感じてしまう。

 

オートマティックに流れ込んでくるニュースにはつくづく客観性はなく、近視眼的な東京中心の考え方なんだということは、いつも心のどこかに留めていたい。

 

 

昨日のセリーナ/大坂戦は、単なるテニス好きの自分にとっては、こりゃ荒れた試合だなあー!でもやっぱりどっちもすごいな!というお気楽な感想だったのだけど、(そもそもネットでロシア語の同時通訳状態でライブを見ていたので、ライブ時の英語があまり聞き取れなかったし)

その波乱に満ちた試合と大坂選手のグランドスラム初優勝にあたっては、随分多方面で議論を呼んでいるようで、興味深いニュースだなと感じている。

 

テニスというスポーツの歴史が内包する女性差別と黒人差別の問題。#ME TOO の余波ともいえる、何かを「女性の権利・平等のために」という題目をつけて糾弾してしまうなかで起きるある種のすり替えの問題。国際的に活躍する、移民やハーフ/ミックスの選手についての扱いの問題。などなど。いろいろてんこ盛りだ。

私としては、いろんな意見それぞれに共感する部分あり、違和感を感じる部分あり。

 

こういう複雑な要素をもつ出来事を一概に語ることは出来ない。

このところ、そういう複雑なニュース、トピックがぐっと増えていると感じる。

 

それはとりもなおさず、世界が以前は単純明快だったということでは当然なくて、世の中の分断と成熟が同時進行で進みつつあることのひとつのあらわれなのだと感じている。

 

極端にどちらかに肩入れして言い切ったり、品性を欠いた「本音」をぶちまけるみたいに語る意見が大手を振ったりしている一方で、

さまざまな事情を抱えた当事者の声をメディアを介さずSNSなどで見聞きする事もできるようになって、メディアリテラシーが高まり、大メディアにやすやすとコントロールされぬようにもなった。

 

自分としては、表面で起こっていることだけを見て断罪するのではなくて、「どうして彼/彼女がそのような言動をしたのか」「なぜこのような事が起こったのか」という背景を考えるという【考え方のくせ】を身に付けることを心がけるのみだ。

 

ほとんどのことは「本当のところは分からない」から、少なくとも自分が落ち着いて機嫌良く、時間をかけてゆっくり考えるようにすれば間違いは比較的減るかな、と、いずれ落ち着くところに落ち着いてくる場合が多いかな、と感じている。

だいぶ後になって、まじでか!全然勘違いしていた!と愕然とすることはけしてなくならないので、「なんも分かってないことを分かってる」という自覚が大前提。

 

また、何かを強く「そのように」感じた時は、ちょっと冷静になって振り返ると、「自分がそのように感じたかったんだ」という自分の中の偏見やねじれが自覚できることもよくある。

そういう省みる心も大事と思っている。3歩進んで2.5歩さがりながらも、じりじりと進むのだ。よりましな人間になれるように。

 

 

今回のテニスのケースでは、いろいろな思想やジェンダーや出自をもつ人たちが、この事件に自分の日頃の主張やエゴやいろいろな思いを絡めた色眼鏡をつけて語っている。

だからあたかも異なった現実がたくさんあるかのように見える。

 

けれども、いちテニスファンの自分は、たまたまライブで生きて動く彼女達を応援しながら見ていて、その表情や語気や涙や、オーディエンスの空気感やジャッジの様子などもそのまま見ていて、そのうえで自分が納得性を持って感じているところはある。

 

目の前で繰り広げられている出来事だけでは知りえない、知っておくべき歴史や知識はもちろんあるが、後付けの知識や意見や分析とは一線を画して目の前の現実の姿があるということは大きいことだ。

 

混沌とした世の中にあって、そういうもの、つまり誰かの意見が介在する以前のものを見ておく知って、自分なりに感じたり考えるということは、どんなジャンルにおいても結構大事なんだな〜と改めて思った今回の出来事だった。