続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「アバウト・レイ 16才の決断」

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2015年アメリカ/原題 3 Generations/ゲイビー・デラル監督/92分

公式サイト:http://aboutray16-eiga.com/

 

設定は、いかにも現代的というか、NY的。

レズビアンの祖母が同性パートナーと暮らすアパートに、シングルマザーとその子供が同居。ただしかつて少女だったその子は16才になった今では男性への性転換を熱望している。

 

そんな一風変わった家族という設定なのだけど、そこで繰り広げられているごたごたや感情のやりとりは、ごく身近なものだ。設定のわりに、特にびっくりさせられることもない、本当にさりげない物語。

何はともあれ皆に愛され大事に思われている一人の幸せな少年が、アイデンティティーの不安定な思春期を経て守られながら大人になっていく。子供のことで思い悩むなかで、気ままにお気楽に生きていきたい大人たちも責任ある存在として子供と共に成長していく。そんなオーソドックスな家族の物語。

 

本当にさりげない作品だから、気楽に、ほどほどな感じで上手な役者たちの競演やお話をゆったりと楽しもうというかんじ。

しかし、感じは良くとも、良くも悪くもそれほど印象には残りづらい作品だな。

 

印象に残ったのは、LGBTについての描き方。

LGBTという言葉はもう一般に聞き慣れた感があるけれど、これは十把一絡げにひとつの単語で表現できる事象では、本来ない。

この作品では、レズビアンの祖母がトランスジェンダーに対するすごく無邪気な無理解を示したり、どう接していいか分からない周囲の人々の態度のさまざまなパターンだったり、その中でトランスジェンダーの当事者であるレイ君がどのように扱ってもらいたいか、どうありたいかが率直に表現されていたりする。

 

こうした描写は、トランスジェンダーを理解するひとつの説得力あるテキストになると思う。監督はトランスジェンダーの人物ではないけれど、演じた役者と共に、事前に相当入念にトランスジェンダーの子供たちに取材したとのこと。

 

間違ったステレオタイプを植え付けるようなことがあったら、とんでもなく罪深いことになってしまうので、そこは一番気を遣ったことだろう。

まー映画的には、そこですか?という誉めどころではあるのですが。

 

あとは、主演のナオミ・ワッツは普通に魅力的だったなー。ま、タイプキャストだったけど。でも整形も全然してなくて、色っぽく少しくたびれたルックスがセクシーだ。何よりちょっと悲しいような優しい表情に心惹かれる。

年を重ねて、怖さを全然感じさせない美しい女性というのは、それだけでひとつの達成ではないかと思っている、彼女はそんなひとり。

 

以前、ナオミ・ワッツアクターズ・スタジオ・インタビューで生い立ちを尋ねられた時、母親がごりごりのヒッピーで幼少期はピンク・フロイドのツアーに同行していたというエピソードを披露して、観客から喝采を浴びていた。

 

本人はいたって平凡でフツーな考えとセクシャリティーの持ち主で、でも周囲の人々が皆超ファンキーで常識はずれという状況が、この映画と重なるなあと思いながら見ていた。周りがどうあれ、自分は普通の自分でどーんといる、その堂に入った受け入れ感なー。

 

家族の愛と理解と、ちょっとスパイスに母親の艶っぽいエピソード絡みながら、最後は「でもどうあっても家族は家族だよね」というNY的な大円団。みんなありのままの自分を認め合うのが平和、という。ぱちぱちぱち。