続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「生きのびるために(The Breadwinner)」

梅雨の合間。

せっかくのおひさまだけど、まだ地面が湿気っぽいので布団は干せないなー。

今日は1本締め切り。昼までにしゃっと仕上げる予定。

午後はジムヘ行きたいと思っていたけど、おっちんが朝、今日は放課後ボルダリングジムへ行きたいのでついて来てー、というので、そちらに付き合うことになりそう。

 

最近、思春期目覚ましいおっちん。どんどん手を離れていく感覚。

もう「ついて来て」なんてあとわずかのことだと思うと、なんだか貴重に思えてしまう、今日この頃。

 

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2017年アイルランド・カナダ・ルクセンブルク合作/原題 The Breadwinner/ノア・トゥオメイ監督/94分/日本公開(劇場公開なし)2018年6月1日〜

 

おっちんと一緒にNetflixにて鑑賞。

タリバン政権下の2001年のアフガニスタンが舞台。

人権蹂躙が当たり前の非常に抑圧的で理不尽な社会に住むある少女の暮らしを見つめた作品で、おっちんも驚いたり嘆いたりしながら見入っていた。

 

アイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーンサルーンの制作で、前作の「ソング・オブ・ザ・シー」は日本でも劇場公開されていたけれど、本作はNetflixのみ。評価は高いものの、シリアスな社会派アニメーションゆえ、日本では集客が見込めないと判断されたのだろう。

 

エスニックな表現が妖しく美しく、ぐっと引き込まれる。日本やアメリカのアニメーションとは違うベクトルをはっきり志向した詩的な表現。

アフリカや、シリア難民といった不遇の人々を伝えたニュースやレポートや写真で子どもたちを見ると、その目の力、大きくて黒々と光っていて訴えかけるような強い瞳にいつもどきりとさせられる。

この作品においても、主人公の少女の瞳の強さ、ごまかしのきかない、射るようにまっすぐな瞳が心に残り、作り手の思いを感じた。

 

 

原作は、カナダ人作家デボラ・エリス作の同名の児童文学。90年代後半に実際にパキスタンの難民キャンプに足を運び、何カ月間も女性や子どもたちに聞き取りをしたそのリアルなインタビューを基に書かれた小説とのこと。

 

ひとりの少女の住む世界を通して語られることや、空想的なイメージに遊ぶことで過酷な現実を何とかやり過ごそうとする心の持ちようは、「この世界の片隅に」を思わせる。

 

宗教が違っても、時代が違っても、なぜ暴走した権力や、女性差別や暴力というのは、似たような形をとるんだろう。

主人公の父親は、「少女に物語を教え語った」という罪で投獄される。

心の豊かさや芸術や文化を憎むのもまたこうした暴力的な世界の特徴だ。

 

狂った現実から少し目を逸らし息をつくために、寓話のパートが差し挟まれながら作品は描かれていく。現実のパートとは対照的な純朴な可愛らしさ、きらきらとした映像の対比。夢が醒めないでほしいと思うような、やりきれない気持ちにさせられる。

そして、どんな状況にあっても、何も持っていなくても、人には最後に想像力という希望が残されていることをこの作品でもしみじみと思う。

 

少女パヴァーナが日々をサバイブしていく姿を通して、少女の生きる社会の息が詰まるような抑圧感、希望のなさ、無力感、残酷で愚かしい暴力が跋扈する世界のありようがある怖さを伴ってわが身に迫ってくる。

 

現実と寓話が交錯するラストの高まり、素晴らしかった。