続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「希望のかなた」

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楽しみにしていた、カウリスマキの新作。

こぢんまりと可愛らしくまとまっており、けして大柄な作品ではない。

この作品ベルリンで賞を穫ったらしいよ、とだんなさんに言うと、「えー!?まじで?」とすごくびっくりしていた。

 

確かにさりげない作品なんだけど、でも常に一番みじめで弱く打ちのめされた人々に対して常に温かいまなざしを注いできたカウリスマキが、ぶれずに踏ん張るようにしてこういう映画を撮り続けていること、とても大切だし、積み重ねるほどにボディブローのように効いてくるのだと思う。

 

大量の難民問題に直面するヨーロッパ各国が今どれだけ難しい状況にあるかを垣間見せつつ、人間の持つユーモアと人生の美しさを見せ、どんな時も人間らしくあることをきっぱりと地味に訴えていく、この賞はカウリスマキの映画人としての姿勢を称えたものだと思う。

 

彼の映画の全てがお気に入りだけれど、今作もこの毎度出て来る愛想のない人たちが、ああなんていいんだろうと思って。

口が立って、見た目が美しくこぎれいで、コミュニケーションが上手で。そういう外見上ソツのないいわゆる魅力的とかチャーミングとか言われるような人が、カウリスマキの映画には全然出て来ない。みんなでこぼこしていて、年もとっているし、どちらかというとみっともないような人々だ。

 

この無表情で可笑しな人々は、人間はどう行動するかが全てなんだと伝える。

何をどういう風にきれいに言おうが、何もしない人は何もしない人。

彼らはにこりともしないんだけれど、皆正直者で見返りなど想像だにしない。

ただ困っている人に迷いなく黙って手を差し伸べる。何の交換条件も留保もなく、できる範囲のことをする。

そのことが、世知辛い今の世の中にあって、たまらなく優しく感じられる。

 

結構みんな考えが足りなくって、わさびをてんこ盛りにした変な寿司屋にチャレンジして大失敗したりしているんだけど、やけにチームワークは良く、知恵を絞ってあるものでなんとか力を合わせてしのいでいくということの可笑しさと微笑ましさ。

 

賢くも美しくもなく、頑固で融通が効かないカウリスマキ映画の住人たちは、今の世の中における成功者や、人気者や、もてはやされている人種とは対照的な存在だ。

けれども、コアには人としてとても清潔な部分がある。

この愛すべきでこぼこした人たちが、世界のどこかに地味に生きていることに心から安堵し、自分の生き方を省みさせてくれる。

 

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アキ・カウリスマキ監督