続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「トースト 幸せになるためのレシピ」

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「トースト 幸せになるためのレシピ」(2010年、イギリス作品)、Netflixにて鑑賞。

お茶を飲み、洗濯物をたたみながら子どもたちと。

 

イギリスの人気料理家、ナイジェル・スレイターの自伝を基に作られた作品。

1960年代のイギリスが舞台で、当時の生活スタイルや食習慣がよく描かれているのが面白い。

 

やっぱり子どもと見る映画は、子どもの目から世界が描かれている物語だとまずのめり込んで見る。途中、感情移入して悔し泣きするおっちん(笑)。

 

さらっと1時間半。あることはある、ないことはないというあっさり感が良し。無理になんでもかんでもすっきりとさせることはない。これは、原作者の意向というのもきっとあると思う。

 

ヘレナ・ボナム=カーターの演じる継母。下層階級の家政婦出身でどうしても下克上したかったので、色仕掛けでまんまと主人公ナイジェルの父ちゃん(金持ち)を陥落したというガッツのある女性。完璧に家事をこなし、料理はプロはだしで、スペック的には逆にものすごいのだけれど、下品で歯に衣着せぬ女性。

ナイジェルは、彼女がどーうしても好きになれなくって終始ぶつかっている。

 

映画は昔の価値観丸出しでポッター夫人を蔑んで当然な空気感で描かれるのだけど、今の時代の感覚で見ると「いやーがんばってるよね、まめまめしくよく働くし、少年に対しては雑だけど、表裏のない人で根っからの悪人ではないよね」という複雑な感情がわき起こってくる。

ヘレナ・ボナム=カーターはまた生々しく上手いから。そしてこの作品が女性監督ということも、まなざしに影響を与えているなと感じる。

 

けれども、子どもに何が幸いするかは分からない。

優しいけれど、生野菜もろくに食べた事がなかったくらい、缶詰すらまともに温められなかった激しく料理下手の母が病で亡くなり、後がまのポッター夫人の素晴らしい料理に何はともあれ栄養満点で育てられた少年。

さらに元々の料理好きに加え、彼女への敵愾心から料理の腕をぐんぐんとあげ、結果的に少年は有名料理人になった。

 

それが良いとか悪いとかを映画はことさら言いたいわけではなくって、ただ「子ども時代は、自分の生き方を選べない」ということが、子どもの目を通じてよく描かれている。

 

少年は17才で子どもであることをやめる。父が急死したことを機に、全てを置いて、かばんひとつでロンドンへ向かう。

問題は継母との関係性ではなかった。愛情はあるけれども少年を自分に属しているものとして振り回し、ありのままの少年が気に入らず「もっとこうあってほしい」を押し付けつづけた父親との関係こそが、少年が自分らしく生きる上での障壁だった。

映画では少年が同性愛であることも仄めかしている。当時は厳格な父親とはとても相容れない価値観だったことだろう。

 

ひとりにしないでとすがる継母の願いはきっぱりと断る。もう、誰も自分の生き方を強制することはできないという強い決意。ちっとも好きではなかった、でも本当の敵は彼女ではなかった。

 

自分が熱意を注ぐ対象がはっきりとあって、あとは健康と若さがあれば何も怖いものはないという清々しいラスト。

17才のナイジェル少年を雇うロンドンの有名レストラン「SAVOY」のオーナーシェフ役としてナイジェル・スレイター自身が最後にちょこっとカメオ出演しているのが憎いです。