続・みずうみ

映画のことを中心に、小さく平凡な毎日の中で自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「断片的なものの社会学」岸政彦著

インタビューについてもっと考えを深めたいな、いろいろなものが読みたいな、と思っていた頃に本屋で偶然出会ったのが社会学者の岸政彦さんの本。だから知ったのは最近です。

 

京都の立命館の先生をされているようで、社会学のフィールドワークとして、市井の人々へのインタビューをたくさん、長くされているそう。仕事というよりもはやライフワークというかんじで、話し手の言葉のクセもそのままに起こされた原稿の、生き生きと面白いこと。コテコテの関西弁のインタビューとか、ほんとに味があっていいです。

 

 

今読んでいるのがこの本。

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インタビューそのものよりは、岸さんがどう世の中を、世界を捉え、人にどんなまなざしを向けているかということが綴られているエッセイ中心の本。でも、語りをそのままに書かれた新世界の歌のおっちゃんのインタビューのパートは、最高にかわいらしく、きゅんとせつなかったなあ。

 

自分の、インタビューには興味が尽きないと思う気持ちがすごく岸さんと同じで、うんうんと頷きつつ読む。

 

子どもの頃、たまたま見つけた小石を拾い上げ、感慨を持ってじっと見ていたというエピソードは象徴的だ。

その石が、無数にある中からたまたま選ばれることの奇跡、一旦そこに注意を向けると、ひとつひとつみんな違ってすごくオリジナルな存在であること、それらが無数に集積してこの世界が形作られていることに圧倒されるという気持ち。

 

私も、小学校の帰り道、ひとつの石を選んでいつまでもいつまでも足で蹴りながら帰ったものだった。あるいは長い枝で地面をこすりながら帰ったり。意味のない存在だったその石ころや枝が、突然自分のもの、特別な存在になることに不思議な感覚を得たものだったなあ。

 

その感覚は、確かに自分がインタビューに際して抱く、途方もない気持ちにつながっていると思う。

会う前には大衆の中の一人でしかなかった誰かに、一度向き合い対話してみると、誰一人退屈な人などいなくって、驚くようなそれぞれ独自の人生を皆懸命に生きているという事実の一端に触れ、打ちのめされるほどに驚いたり、感動したりする。

本当に途方もないことだな、といつも思う。

 

年内のインタビューは、空圧機器設備の会社の社長さんと、映画の音声さんという、またばらばらな人たちで、準備は面倒だし、いつも緊張するんだけれど、やっぱり楽しみ。

 

この本にははっとさせられるような人生の面白みに気付かさせてくれる要素が詰まっていて、人への温かい目線があって、ああいいなと思いながら読んでいます。