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続・みずうみ

小さく平凡な毎日の中で、自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「LA LA LAND」

今日で4月もおしまい。

なので、今月の映画たち。

 

「LA LA LAND」

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みんな大好き「ラ・ラ・ランド」。私もものすごい好きでした。1回目、娘と見に行ったけれど、こんなに分かりやすいストレートな映画、と大人の感覚では思うものの、10歳には機微っちゅーもんが、やはりねえ。となりで時折「ふぅー」とため息をつくので気が散って。

見終わった後の感想で、娘はライアン・ゴスリングにもまったくピンときていなかったと判明。しっかりしてる彼女を、もういっちょ前と思って接しているけれど、やっぱり彼女も10歳なんだな、と新鮮な驚き。

この映画におけるセブは、女性みんなの夢の恋人で、逆にミアは「そうであったかもしれないあなた」という立ち位置なのは、キャスティングからもわりにはっきりしている。

だから、こう言っちゃうとまあ気恥ずかしいことなんだけれど、しびれる、時に冴えない現実を生きる大人のひとりとして、こういう映画は、どうせなら、ひととき、心置きなく酔っぱらって、ぐっと入り込んで見たいなと。

そんな訳で、結構大きなスクリーンで夕方からやる時間帯を狙って、シャンパンの小瓶とチーズを鞄にしのばせて、もう一回見に行って来た。

 

オープニングタイトルの出るまでの、フリーウェイでのミュージカルのシークエンスだけで、やっぱりもう、うるっとくる。

これが、アメリカ映画が今、やらなきゃいけないことだ、と感じる。

それを、これが初の大作である若き映画監督がやったのだなあ、と思う。

「セッション」もリズム感とシズル感がすごいと思ったけれど、やっぱり彼は音楽の人で、ぐっとくるようないかしたメリハリ、スタイリッシュな感覚を持っている。同時に懐かしい感覚もあって、昔の映画も相当好きなんだろうなと思う。

 

劇中の音楽そのものの力も相当だ。映画のトーンと巧みにリンクした、しかもすごくキャッチーで心に残る、印象深いフレーズたち。うちの子どもも、いまだに家で口ずさんでいる。

 

そこに素晴らしいカメラワーク。ネットのメイキング動画で、冒頭のシークエンスを監督が自分のiphoneで自ら動きながらテスト撮影したものを見たのだけど、たまげた。この時点で相当なクオリティになっている。手持ちiphoneですよ。

技術はあくまでツールなのだなあ、まずは才能ありきなのだな、と感心した。

撮影のメイキングは他のシーンも面白く、この作品のカメラマンは本当に肉体労働だな!と思いつつ面白く見た。

 

隙のない作品の流れ。冒頭は、勢いあるミュージカルシーンをたたみかけ、見る者を高揚させ、途中はテンポよく、あくまで楽しく美しく、物語をどんどん見せて、ラストのセブとミアの再会、「そうであったかもしれない人生」をセブのピアノに乗せて夢見るように見せて行くシーンにはやっぱり泣かされてしまった。あんまりきれいで、かけがえのない大事な感覚があって。

最後の目だけで交わす、かつての恋人たちのやりとりの静かさとそれゆえの雄弁さが、心にあったかな灯をともすように、じんじんといつまでも残り、心を温めてくれる。

映画は、ひとときの夢かもしれなくても、こういう後味を残してくれる映画が、どれだけ人を温め、励ましてくれることだろう。

現実のアメリカ、ひいては世界が、げんなりするほど下品だから、この映画の持つ品の良さに、多くの人が救われたような思いになったのじゃないだろうか。

 

ところで、別の日に、この映画を見に行っただんなさん。「ああ良かったな・・・」と思いながら見終わって席を立つと、後ろの席のおばさんがしんみりと「ふうー、長い映画だったねえ」と言って、思わず振り返った、とのこと。

このタイミングで、こんなにパンチ力のある、全てを粉々にするコメントはそうそうないね、と爆笑。

デイミアン・チャゼルの耳には絶対に入れたくない。