続・みずうみ

小さく平凡な毎日の中で、自分が感じた色んなことを、湖のような落ち着いた心持ちで考えていきたいと思います

「怒り」

一仕事終えて、ほっと一息。

今日はこの後、忘れずに公民館に本予約に行かなくちゃ。

 

ツアーファイナルが始まっている。しばらくはまたお楽しみの日々。決勝ラウンドに残ってほしい!しかし明日は飛ぶ鳥落とす勢いのマレーだなあ。

 

気がつけば、11月も後半戦。2016年ももうすぐ終わりが見えて来た。

今年は、映画あんまり豊作じゃなくって、5〜60本くらいしか見なかったんじゃないかな。

今日は今日とて、子供にせがまれやっとのことで「君の名は。」を見に行くつもりが、「この世界の片隅に」のほうがやっぱ見たいな、と思い返し、子供たち二人だけで行かせることにした。

 

しかし「君の名は。」すごいなー。公開からもう3ヶ月も経っているのに、まだ一日4回まわしてる。しかも400席の劇場で!すごいなあー。じゃあ見に行けよ、という話なんだけど、うーーん。

 

 

しかし、先週滑り込みで見た李相日の「怒り」は、確実に今年一番感激した映画で、見られてほんとに良かった、ありがとう、と思った。

 

エンドロールに切り替わっても、放心して立ち上がれない映画がある。ごくたまに。

最近ではグザヴィエ・ドランの「mommy」がそうだったなあ。

好きな映画は本当にそれこそいくらでもあるけれど、心の中で特別な場所に置かれている、自分にとって個人的に特別な映画というのが多分2〜30本くらいある。

 

そして、「怒り」では、久々に立ち上がれなかった。

時間が経ってみないと分からないところはあるんだけど、「怒り」は、おそらく、特別シリーズに加わる作品になると思う。

 

色々書き出したらどこまでも、という勢いだ。

結局隅から隅まで好きすぎる、ということに尽きる。

 

映画って、総合芸術だから、他の芸術形態と違って、ものすごく多方面のさまざまな要素が絡み合って成り立っており、時々奇跡みたいな調和が生まれる。

その調和を見た時に何よりも痺れてしまう。

 

一人の、卓越した素晴らしく深みのあるイマジネーションを持った指揮官の元に、素晴らしい仕事人たちが集結し、しかしぶれたりばらばらになったりせず、指揮官のイマジネーションが明確に貫かれて、全ての要素がぴったりと馴染んでひとつの世界を作り上げている。

なんでそんな事が可能なんだろう、とすごい映画を見るといつも思う。

 

そして、私が本当に愛着を感じてしまう映画はいつだって過剰に完璧で、あやうい所に潜って、何とか帰って来たみたいな、どこか命を引き換えにしている感覚の映画ばかりだ。

無理はいけない、楽しく自然体がいいんだ、みたいなこと、普段はしゃあしゃあと言ってるくせに、一皮剥けば、結局過剰で、人間離れしたすさまじいものにこそ強いシンパシーと尊敬を感じてしまう。

 

そういう風に、命を削って創られたものにしか、どこか本当の価値を見出せない、自分は残酷で強欲な人間なのだろうなと思う。

 

この李相日という、在日朝鮮人3世の監督は、偏屈な人としてもつとに有名で、本当にお金や人気者になることなんかには、全く興味のない、ただ映画に全て捧げている人のようで、それゆえ相当役者を追い込むことでも有名な人だ。

 

その甲斐あってか、「怒り」の役者への演出は感動的なほどで、誰が一番と言えないくらい、皆が素晴らしいのだけど、

ある程度年を重ねて地歩を固めた役者でもきつかろうに、広瀬すずや、大抜擢された沖縄人の佐久本宝といった10代の役者にとっては、良くも悪くも人生を変えられてしまったところはあるだろう。

前作「悪人」で主役を演じた妻夫木聡も、2年間精神的に病んだと言っていた。でも、個人的にはこの作品が彼の最高傑作だと思う。

 

何が幸せかは、誰にも分からないが。

李監督が映画至上主義であることは間違いなく、彼のありようは、ある意味罪深いことではあると思う。

 

それでも、どんなに過剰で完璧であっても、それだけでは心動かされない。

結局は監督のまなざしが全て。「そこに愛があるか」ということ。

 

「怒り」は、人を信じるということはどういう事かということを、突きつける。そんなに人間を高く見積もるんじゃない、所詮こうだろう、お前も、お前も。

突きつけつつも、そんな愚かで弱い人を愛おしいと言っている。

だから身を寄せ合って生きて行くんだと言っている。

だけど何があっても生き抜いて行く強さもあるんだと言っている。

誰一人見捨てはしない。

そこには力強いむき出しの愛の感覚がある。

 

閉じ込められ、押し込められ、とぐろを巻いて行き場を失ったフラストレーションが、真実を求め、泣き叫ぶみたいに爆発している、そのパワーに圧倒された140分だった。

時に沁み入るように静かで美しく、時に目を背けたくなるほど生々しく痛い。少しもポジティブでも、美しい終わり方でもなかったのに、人間がたまらなく愛おしいという感覚がしみじみと残る。それでも生きて行くんだという強い意志が伝わって来て、泣けてしょうがなかった。

 

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